【松本市】成年後見と家族信託の使い分けは?
成年後見制度と家族信託は、どちらの方が良いのでしょうか?
答えは「どちらも良い制度であり、使い分けが必要」です。
家族信託のメリットは本当?
財産が凍結されない?
家族信託のメリットとして「認知症になっても財産が凍結されない」という点が良く上げられます。
これは、誇張されすぎか、成年後見制度について誤った認識に基づいています。
認知症になった場合に、金融機関に本人がお金をおろしに行っても「判断能力が低下しているので、下せません」ということでお金をおろすことができなくなります。
これは、金融機関側としては「本人の預金の保護」のためにしていることであり、むしろ財産を守るためには大事なことなのです。
もし、本人が、認知症に付け込まれて、詐欺的なリフォーム代金を支払おうとしていたり、特殊詐欺に遭いかけている場合を想像するとわかりやすいと思います。
そして、こうなった場合には、成年後見人の選任申立を家庭裁判所に行い、成年後見人が選任されれば、預金はすぐに下すことができるのです。
また、現在は、裁判所に後見人選任の申し立てを行うと、1カ月程度で選任審判がおりますので、すぐに預金を下ろすことができます。
成年後見よりも柔軟な制度?
家族信託は「成年後見制度より柔軟な制度」であるというメリットが良く上げられます。
これは、その通りです。
・自宅の売却が可能
・賃貸アパートの買い替えができる
・借り入れもできる
ただし、成年後見制度は家庭裁判所の監督に置かれるため、家庭裁判所の指示を受けながら事務を行うことで、違法なことや不当なことを知らないうちに行ってしまうことが防げます。
しかし、家族信託では、信託監督人を付けた場合を除き、「法律に詳しくはない、家族という立場の人が事務を行う」ため、知らず知らずのうちにやってはいけないことをしてしまい、トラブルになったり、裁判になったりというケースもあります。
成年後見制度と比べて費用が安い?
家族信託については、「成年後見制度と比べて、費用が安い」とよく言われます。
これについては、本当にそう言えるのかはちょっと疑問です。
例えば、成年後見人の場合、3000万円ほど預金があれば、だいたい月3万円程度の報酬が成年後見人に付与されます。
年間36万円、5年で180万円です。10年で360万円。
これだけ見ると家族信託利用時の「信託契約コンサルティング報酬」などでは80~200万円程度と報酬がネット上ではよく見られますので、「同じことをするなら家族信託の方が安い」と思われるかもしれません。
しかし、「同じこと」ではないのです。
家族信託では「財産管理」を行うことはできますが、「身上監護(生活に関する事務や契約)」は行うことができません。
もし、それを行う人が必要であれば、改めて成年後見人を選任しなければなりません。
そうなれば、結局報酬が発生します。
また、家族信託の受託者に、報酬を支払う規定を信託契約の中に設けることが多いです。
そうなるとやっぱり報酬が発生します。
すると「最初に100万円以上専門家に払い、受託者にも毎年報酬がかかる」ことになります。
家族信託と成年後見、どちらが費用が安いかは、冷静に考えてみる必要がありそうです。
二代、三代先まで財産を相続する人を決めることができる?
家族信託については「二代、三代先まで受託者を指定し、財産を取得する人を決めることができる」と言われています。
これはその通りです。
「遺言だと次の世代で取得する人しか定められないが、民事信託ならばその先まで取得者を指定可能」ということです。
これは、同族経営の会社で、会社の敷地や株式について、後継ぎを数代先まで指定したい場合には、非常に便利です。
ですが、それ以外の場合には逆にデメリットとなることがあります。
「相続した人が、自分の好きに財産を処分することができない」からです。
もらった方からすると、自由に使えないのは大変不便です。
なぜ民事信託など契約したのだろう、となってしまいます。
信託を使うべきケースは?
賃貸経営をしている場合
ご本人が、アパート経営や駐車場経営などの「賃貸経営」を個人で行っている場合には(法人化していない)、家族信託はとても有効です。
地方では、アパート経営はなかなか大変で、最初は満室であっても、10年ほどすると修繕をしなければ空室が増えるケースは珍しくありません。
すると、やはり、賃貸経営のために金融機関から受けたローンの支払いが苦しくなります。
そこで「ローンの借り換え」や「賃貸物件を収益の良い物件に買い替える」ことも検討しますが、成年後見ではこれはできません。
家族信託ならば、可能です。
例えば、アパート経営を引き継ぐ意思を持っている長男を受託者として家族信託を行い、管理費用と受託者報酬を除いた家賃を、委託者である父親が受け取る仕組みです。
この際に、受託者である長男が、借り換えや買い替えをできるようにしておくことができるのです。
会社を経営している場合
会社を経営していて、長男が次期社長となることになったが、株式まですべて長男に移すことは抵抗があり、自分が元気なうちは、議決権を行使したいが、時機を見て議決権も移したい、という場合には家族信託が有効です。
こういったことは、成年後見ではできません。
障害のある方の「親亡き後」に備えて
例えば、障害を持つ長男がいたとして、その方が知的障害や精神障害で判断能力がないか、低い場合があります。
そういった場合には、子どもが成人したのちも、親が財産管理や身上監護を継続しています。
しかし、親が亡くなった後、親の持っていた財産はどうなるのでしょう?
長男が相続すると、長男の相続の際は、相続人がいないので、「国に渡す」ことになります。
長男が相続した後では、長男は判断能力がなく遺言ができないため、このようなことが起きてしまいます。
このようなケースでは、受益者連続型信託を使い、親が亡くなった後は財産は受託者であるおい・めいなどが管理し、長男の生活のためのお金をそこから出して生活を確保することが可能です。
そして、次男も亡くなった場合には、おい・めいが受託者となるように設定しておけば、長男が相続せざるを得ず、国に財産が行くことはなくなります。
実は、こういった家族信託がなかったため、唯一の子が親亡き後に財産を相続し、次は国に財産が行くことが確定しているケースが大変多く存在しています。
当事務所でも、多くの事例でこのケースを見てきました。
今後、この「親亡き後のための信託」は増加していくものと思われます。
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